「日本は不登校が多い国なのでは?」
「海外では不登校の子どもはどのくらいいるの?」
「不登校の世界ランキングで、日本は何位?」
このような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。
近年、日本では不登校の児童・生徒が増加しています。文部科学省の調査によると、2024年度(令和6年度)の小・中学校における不登校児童生徒数は、約35万4,000人と過去最多になりました。
一方で、海外に目を向けると、日本と同じ基準で「不登校」を集計している国はほとんどありません。
結論からいうと、「不登校率の正式な世界ランキング」というものは存在しません。
ただし、OECDが実施している国際学習到達度調査「PISA」では、世界各国・地域の15歳を対象として、ほぼ同じ条件で学校への欠席状況を調査しています。
そのため、PISAのデータを利用することで、世界各国の「学校を休む生徒の割合」をある程度比較することは可能です。
この記事では、2026年9月時点で確認できるOECD・文部科学省・UNESCOなどの情報をもとに、不登校の世界ランキングについて分かりやすく解説します。
- 不登校の世界ランキングは存在するのか
- 日本は世界的に見ると欠席が多い国なのか
- 日本ではなぜ不登校が増えているのか
- 海外では不登校をどのように捉えているのか
- 不登校になった場合にどのような進路があるのか
「日本だけ不登校が多いのでは?」と不安を感じている保護者の方も、世界の状況と比較しながら考えてみましょう。
結論|正式な「不登校の世界ランキング」は存在しない
まず知っておきたいのが、世界共通の基準で作られた「不登校率ランキング」は存在しないということです。
OECDが2026年に公表した学校欠席に関する報告書「Every Day Counts」でも、学校への欠席や不参加について、国際的に統一された定義が存在しないことが示されています。
その理由は、国によって「不登校」「長期欠席」「慢性的欠席」などの定義が大きく異なるためです。
たとえば、日本では一般的に、年度内に30日以上学校を欠席し、心理的・情緒的・身体的・社会的要因などによって登校しない、または登校したくてもできない児童生徒を「不登校」としています。
病気や経済的理由による欠席については、原則として日本の「不登校」には含まれません。
一方、海外では、病気などの理由も含めて「年間授業日の10%以上を欠席した児童生徒」を慢性的欠席として集計するケースがあります。
つまり、日本の「不登校率」と海外の「長期欠席率」は、同じ数字のように見えても意味が異なります。
「海外では不登校率が20%、日本では5%だから、海外の方が4倍不登校が多い」と単純比較することはできません。
世界ランキングを見る場合には、順位だけではなく、「何を欠席としてカウントしているのか」まで確認する必要があります。
参考元:OECD「Every Day Counts」
参考元:文部科学省「不登校児童生徒の定義」
不登校の世界ランキングに最も近い「PISA 2022」のデータ
国ごとに不登校の定義が違うのであれば、世界各国を比較することはできないのでしょうか。
その際に参考になるのが、OECDが実施しているPISA(Programme for International Student Assessment:生徒の学習到達度調査)です。
PISAは、世界各国・地域の15歳前後の生徒を対象に実施されている国際調査です。
数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーなどの学力だけではなく、学校生活や家庭環境についても調査しています。
その中には、
「PISAのテストを受ける前の2週間に、丸一日学校を休んだことがあるか」
という質問があります。
日本の「年間30日以上の不登校」とは異なる指標ですが、同じ質問によって各国の生徒を比較しているため、現在確認できる国際データの中では、不登校の世界比較に比較的近い指標と考えることができます。
PISA 2022|丸一日学校を休んだ15歳の割合
OECDが公開しているPISA 2022のデータから、主な国を比較すると以下のようになります。
| 国・地域 | 直近2週間で丸一日学校を休んだ15歳の割合 |
|---|---|
| デンマーク | 20.4% |
| フィンランド | 14.2% |
| ノルウェー | 13.9% |
| スウェーデン | 9.5% |
| 日本 | 3.5% |
| 韓国 | 2.4% |
このデータを見ると、北欧諸国と比較して、日本では「直近2週間に丸一日学校を休んだ」と回答した15歳がかなり少ないことが分かります。
OECD Education GPSでは、日本は3.5%でPISA参加80か国・地域中79位となっています。
さらに韓国は2.4%で80位でした。
つまり、この指標だけで比較すると、日本は世界でも学校を丸一日休む15歳が非常に少ない国の一つです。
一方、デンマークは20.4%、フィンランドは14.2%、ノルウェーは13.9%となっており、日本との差はかなり大きくなっています。
ただし、「日本は不登校世界ランキング79位」と表現するのは正確ではありません。
PISAで調べているのは、あくまで「直近2週間に丸一日欠席した経験」だからです。
日本で使われる年間30日以上の「不登校」とは条件が異なります。
そのため正確には、
「PISA 2022の短期的な丸一日欠席率では、日本は80か国・地域の中でも非常に低い」
と理解するのが適切です。
参考元:OECD Education GPS「Japan – PISA 2022」
参考元:OECD Education GPS「Korea – PISA 2022」
参考元:OECD「Education in Sweden」
日本の不登校は世界的には少ない?国内では過去最多に
ここまでの国際比較を見ると、
「では、日本は不登校が少ない国なのでは?」
と感じる方もいるかもしれません。
しかし、ここで非常に重要なのが、「世界的に短期欠席率が低いこと」と「日本国内で長期不登校が増えていること」は別の話だという点です。
OECDが2026年にまとめた日本のデータでは、30日以上の不登校となった児童生徒の割合は、次のように上昇しています。
- 小学生:2015年 約0.4% → 2024年 約2.3%
- 中学生:2015年 約2.8% → 2024年 約6.8%
特に中学生では、約10年間で不登校の割合が2倍以上となっています。
また、文部科学省の2024年度調査では、小・中学校における不登校児童生徒数は約35万4,000人となりました。
これは過去最多です。
一方で、数字の増え方には変化も見られます。
文部科学省によると、小・中学校における不登校児童生徒数の前年度からの増加率は、2023年度の15.9%から2024年度には2.2%まで低下しています。
新たに不登校となった児童生徒数についても、減少が確認されています。
そのため、現在の日本の状況は、
「不登校児童生徒数そのものは過去最多だが、急激な増加には少し落ち着きが見られ始めている」
と捉えることができます。
参考元:文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等調査」
参考元:OECD「Every Day Counts」
世界では約2億7,300万人が学校に通っていない
不登校について調べていると、
「世界には2億人以上の不登校がいる」
といった情報を目にすることがあります。
しかし、この表現にも注意が必要です。
UNESCOが公表している2026年のGlobal Education Monitoring Reportによると、2024年時点で、世界では約2億7,300万人の子ども・若者が学校に通っていないと推計されています。
内訳は以下のとおりです。
- 初等教育年齢:約7,900万人
- 前期中等教育年齢:約6,400万人
- 後期中等教育年齢:約1億3,000万人
ただし、UNESCOで使われている「out-of-school」という言葉は、日本でいう「不登校」と同じ意味ではありません。
日本の不登校は、基本的に学校に在籍している児童生徒を対象にしています。
一方、UNESCOの「out-of-school」には、
- 学校に入学していない子ども
- 教育制度から離脱した子ども
- 貧困によって学校へ通えない子ども
- 紛争や災害によって教育を受けられない子ども
- 難民・避難民など教育環境を確保できない子ども
なども含まれます。
そのため、「世界には2億7,300万人の不登校児童がいる」と表現するのは正確ではありません。
正確には、「世界には約2億7,300万人の学校外児童・若者がいる」と理解する必要があります。
※日本の「不登校」とUNESCOの「out-of-school」は集計基準が大きく異なるため、数字を直接比較することはできません。
参考元:UNESCO「2026 Global Education Monitoring Report」
参考元:UNESCO「Out-of-school rate」
なぜ海外と日本では「不登校」の数字が大きく違う?
海外の学校欠席データを見ると、日本よりもかなり高い割合となっている国があります。
しかし、それだけで、
「海外の方が不登校の子どもが多い」
「日本の教育制度の方が優れている」
と判断することはできません。
大きな理由は、国によって欠席の定義と集計方法が異なるからです。
日本では「年間30日以上」が一つの基準
日本では、不登校を判断する際に年間30日以上の欠席が一つの基準となっています。
さらに、病気や経済的理由などは原則として不登校から除外されます。
海外では「授業日の10%」などで集計する場合もある
海外では、年間授業日の10%以上を欠席すると「chronic absenteeism(慢性的欠席)」などに分類することがあります。
仮に年間180日の授業がある学校であれば、約18日休んだ時点で慢性的欠席に分類されることになります。
さらに、病気による欠席などを含めて集計する場合もあります。
同じ「欠席率」という数字でも、日本と海外では分母や条件が違う可能性があります。
OECDも、国によって欠席の定義や分類方法が異なるため、国際比較には注意が必要だとしています。
不登校の世界ランキングを見る際には、数字だけを見るのではなく、
「その国では、どのような子どもを不登校・長期欠席として数えているのか」
を見ることが重要です。
参考元:OECD「Every Day Counts」
参考元:文部科学省「学校基本調査 用語の解説」
「日本だけ不登校が多い」というわけではない
不登校のお子様を持つ保護者の中には、
「日本の学校教育に問題があるのではないか」
「海外の子どもは普通に学校へ行っているのではないか」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、OECDの調査を見る限り、学校に継続して通うことが難しい子どもがいるのは日本だけではありません。
OECDは学校欠席について、多くの国で対応すべき教育政策上の課題になっているとしています。
学校へ通えなくなる背景には、さまざまな要因があります。
- 学校生活への不安
- 人間関係
- 学習面での困難
- 家庭環境
- 経済状況
- 心身の健康
- 学校との関係性
- 学習意欲の低下
など、一つの理由だけでは説明できないことも珍しくありません。
不登校は「本人の努力不足」だけで起こる問題ではありません。
また、同じ学校環境であっても、ある子どもには合っていて、別の子どもには大きな負担となることもあります。
そのため、不登校について考える際には、世界ランキングの順位だけを見るのではなく、「その子どもに合った学習環境があるか」という視点も重要になります。
不登校になったら「学校に戻る」以外の選択肢も考える
以前は、不登校になった場合、
「できるだけ早く元の学校へ戻す」
ことが目標とされるケースも少なくありませんでした。
しかし現在では、学校復帰だけを唯一のゴールとするのではなく、子どもの学びを止めないことや安心して生活できる環境を確保することも重視されるようになっています。
現在、不登校のお子様が選べる学習環境にはさまざまなものがあります。
- 教育支援センター
- フリースクール
- オンライン学習
- 学びの多様化学校
- 通信制高校
- 海外の学校への進学・留学
「現在の学校に通えない=勉強や進学を諦めなければならない」というわけではありません。
海外留学も選択肢の一つ
不登校のお子様にとって、海外留学も選択肢の一つになる場合があります。
もちろん、不登校になったから海外へ留学すれば必ず問題が解決するわけではありません。
本人の意思や状況を考えず、環境を大きく変えることだけを目的に留学を決めるのはおすすめできません。
一方で、日本の学校環境に合わなかった子どもが、環境が変わったことで学校生活を送りやすくなるケースも考えられます。
海外には、日本とは異なる教育環境を持つ学校があります。
- 少人数制の学校
- 生徒一人ひとりの個性を重視する学校
- 得意分野を伸ばす教育を行う学校
- 留学生へのサポートが充実している学校
- 進級・進学方法が日本とは異なる学校
など、学校によって特徴はさまざまです。
重要なのは「日本の学校に戻れるか」ではなく、「どのような環境であれば本人が安心して学び続けられるか」を考えることです。
国内の学校、フリースクール、通信制高校、オンライン教育、海外留学などを含めて、お子様に合う選択肢を探していくとよいでしょう。
不登校の世界ランキングを見るときの3つの注意点
最後に、不登校の世界ランキングや海外との比較データを見る際に、特に注意したいポイントを整理します。
1.「不登校」の定義を確認する
もっとも重要なのが、その統計で「不登校」をどのように定義しているかを確認することです。
年間30日以上なのか、授業日の10%なのか、短期間の欠席経験なのかによって、数字は大きく変わります。
2.日本の不登校率と海外の欠席率を直接比較しない
日本では病気による欠席などを除外する一方で、海外の統計ではそれらを含むことがあります。
異なる条件で集計された数字を並べて「日本より海外の方が不登校が多い」と結論付けるのは適切ではありません。
3.世界ランキングだけで教育環境を判断しない
欠席率が低い国だからといって、すべての子どもにとって理想的な教育環境とは限りません。
反対に、欠席率が高い国だから教育の質が低いとも限りません。
数字だけでは、その国の学校文化、欠席に対する考え方、教育制度、子どもの幸福度などまでは判断できません。
※不登校に関する世界の統計を見る際は、「ランキング順位」よりも「調査方法・定義・対象年齢」を確認することが大切です。
まとめ|日本の「不登校世界ランキング」は順位だけでは判断できない
2026年時点で、世界共通の定義による正式な「不登校世界ランキング」は存在しません。
国によって、不登校・長期欠席・慢性的欠席などの定義が異なるためです。
一方、OECD PISA 2022の「直近2週間に丸一日学校を休んだ15歳」という共通指標では、日本は3.5%となっています。
PISA参加80か国・地域の中では79位となっており、この指標では日本は欠席する生徒が非常に少ない国の一つです。
しかしその一方で、日本国内の30日以上の不登校児童生徒は増加しており、2024年度には小・中学生で約35万4,000人と過去最多になりました。
つまり、
「日本は世界的に短期欠席が少ない」ことと、「日本国内では長期不登校が増えている」ことは、どちらも同時に起こっています。
不登校について考えるうえで重要なのは、世界ランキングで日本が何位なのかだけではありません。
学校に通うことが難しくなったときに、その子に合った教育環境や学び方を見つけられるかどうかが大切です。
現在では、日本国内の学校だけでなく、フリースクール、オンライン教育、通信制高校、学びの多様化学校、海外留学など、学び方の選択肢は増えています。
「学校へ戻すこと」だけをゴールにするのではなく、お子様が安心して学び続けられる環境を探していきましょう。
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